第27章 語り合う方法

シェリーが玄関をくぐった瞬間も、手はランドセルの肩ひもをぎゅっと握りしめたままだった。

額のガーゼには、じわりと暗い赤がにじんでいる。頬の片側はぷっくり腫れ、焼きたてのパンみたいに見えるほど。

その背後からシェーンが続き、入ってすぐ、いつもの癖みたいにドアをカチリと内側から施錠した。

キッチンからは、ふわりと濃い香り。ヴェラが牛すね肉をコトコト煮込んでいる。

ベージュのカシミヤセーターに、金茶の巻き髪はペンで適当にまとめただけ。木べらでスープをすくい、味をみていた。

「ハニー、おかえり。ちょうど――」

振り向いた、その言葉が終わる前に。

手の木べらが「ぱたん」と鍋の中へ落ちた。...

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