第32章 ライアン家は法そのものだ

ライアンは顎を引き、シェリーを見下ろした。

蒼い瞳に、「おじいちゃん」と呼ばれた気まずさも動揺も欠片ほどもない。

まるで分別不能のゴミ袋でも眺めるみたいな目だった。

その冷え切った視線が、シェリーの顔から、深い藍のベルベットドレスへと滑っていくのがわかる。

「……じいさん、だと?」

口角だけを引き上げ、温度のない笑み。声は、二人にしか届かないほど低い。

周囲の名士どもの好奇の視線など、どうでもいい。

この世界では、ライアン家が法だ。

身元の知れない小娘を公衆の面前で踏み殺したところで、明日のY市の新聞一面には『先天性心疾患による急死』とでも載るだけ。

彼は手を緩めるどころか...

ログインして続きを読む