第43章 見なければ腹も立たない

濃いこげ茶の特注革靴が教室の木床を打ち、乾いた足音が「タッ、タッ」と響いた。

トニーはまっすぐシェリーのほうへ歩いてくる。その尊大な佇まいは、まるで王が自分の領地を巡察しているみたいだった。

シェリーはトニーに視線すらくれない。机の引き出しからハードカバーの『自然科学』の教科書を引っ張り出すと、「バンッ」と音を立てて机の上に立て、顔をまるごと隠した。

見なければ、心も荒れない。

けれど――シェリーは、この六歳のガキの反発心を甘く見ていた。

トニーが机の前で足を止める。

教科書の向こう側から、圧で殴ってくるみたいな視線が突き刺さってくるのがわかった。

「どけろ」トニーが冷たく命じ...

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