第53章 頭でもおかしくなったか?

刀傷の男が、固まった。

周囲を見回し、それから――たった一人で立っているヴェラを見た。

「ビッチ……ビビりすぎて頭いかれたか?」

男はぺっと唾を吐き、バットを振り上げてヴェラの鼻先に突きつける。

「だったら、死ね――」

言い終える前だった。

ヴェラが、ただ一歩、前へ出る。

「バンッ!」

何をされたのかすら、見えなかった。

血の混じった歯が何本も宙を舞い、男の身体は古布の袋みたいに真っすぐ後ろへ倒れ込む。砕石の地面に叩きつけられ――うめき声ひとつなく、意識が落ちた。

残りの四人が、その場で凍りつく。

「……それだけ?」

ヴェラは手首を軽く振ってほぐす。ハイヒールが埃の上...

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