第86章 泣き虫

リアムは、その場で石みたいに固まった。

最悪なのはそこだ。シェリーはいつものように一発蹴り飛ばすどころか、信じられないくらい優しく、あのガキの背中をぽんぽんと叩いている。

リアムの奥歯が、ぎりぎりと鳴った。

――あれは、俺のバケモノちゃんだ。

毎日、ブラックカードでバービー人形を買ってやって、あの髪を梳かしてやって、ケーキを食わせるために南区の連中までひっくり返した。

それなのに、どこから湧いたかもわからないこいつが、こんなふうにがっちり抱き締めていいわけがないだろ。

胸の奥で、縄張りを踏み荒らされた獣みたいな独占欲が、どん、と爆ぜた。

「おい!」

リアムは大股で一歩踏み込み...

ログインして続きを読む