第88章 覚えているの?

シェリーはくるりと振り返った。

ブルックはまだペルシャ絨毯の上に正座したまま。シェリーを見上げる視線は泳ぎ、長いまつげが不安げに震えている。さっきまでの「無垢で怯えた被害者」を、必死に貼り付け続けようとしていた。

口を開きかけ、声まで震わせる。演技はやたらと熱心だ。

「黙って」

シェリーは容赦なく遮った。

「もうやめなよ、ブルック」ぷにっとした腕を組み、大きな目でぎゅっと睨みつける。「あんたの芝居、ほんと下手」

ブルックの身体が、目に見えてこわばった。それでもなお、しらを切る。

「……何のことだか、わからない……」

「わからない?」シェリーが鼻で笑う。「コネチカからわざわざマ...

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