第145章 誰にやられた

医師は、泣き崩れるほど女性と、重傷を負った男を見比べた。

胸が痛まないはずがない。だが――上からの指示は指示だ。逆らえる立場ではなかった。

「頼まれても無理だよ。私はただの医者だ。悪いけど、早く別の病院を当たったほうがいい」

そう言い捨てると、医師はこれ以上見ていられないとばかりに背を向け、足早に去っていった。

「先生、待って……!」

遠野彩芽は遠ざかる背中に手を伸ばす。だが、広いロビーの真ん中に取り残された自分は、ひどく無力だった。

どうすればいいのか、分からない。

涙が、ぽろぽろ――いや、ぱたぱたと止まらず落ちる。

小林佑は痛みに耐えながら、かすれる声で言った。

「彩芽...

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