第16章 婚約は譲れない

彼女は本当に、少し忙しい。

「千絢、あなたはまだインターンを始めたばかりで、外のことはよく分からないでしょう? あそこは小さなアトリエだし、たとえ社長があなたを重用してくれても、会社を管理するのとは別物よ。ちゃんとした会社に入ったほうが、もっといい経験になるわ」

雲田伊津美が、遠野千絢に噛んで含めるように言い聞かせる。

期待に満ちた母の表情を見てしまうと、なぜか断りづらい。

結局、遠野千絢は困ったように微笑んで口を開いた。

「……分かった。私、デザインならわりと得意だと思う」

もちろん、金融も医薬も――その他もろもろ得意だ。

けれど、さすがに言えば引かれる。だから一番手間の少な...

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