第162章 思いっきり二発は叩いて

「聞こえたよ」

遠野周生は不承不承、そう返した。

遠野彩芽は怯えた目で二人をそっと窺い、それきり黙って朝食を口に運ぶ。今のこの家では、息をするのさえ気を遣う。すべては橋本佑香の顔色次第だった。

ほどなくして橋本佑香が食べ終え、まだ箸を動かしている遠野周生を一瞥する。

「まだ食べ終わらないの?」

不機嫌さを隠さない声に、遠野周生も顔をしかめ、箸を置いた。

続けて橋本佑香は遠野彩芽へ言い渡す。

「彩芽は家にいなさい。どこにも行っちゃだめ。分かった?」

「うん、母さん。遠野千絢を捕まえたら、絶対にあいつの顔、思いっきり二発は叩いてよ!」

彩芽の声は刺々しい。

「はいはい、分かっ...

ログインして続きを読む