第208章 感謝しなければならない

電話がしばらく鳴り続けてから、遠野奏斗はようやく通話に出た。

「……母さん」

『遅いわね。なんで今まで出なかったの?』

受話器の向こうから、橋本佑香の苛立ち混じりの声が飛んでくる。

「用件は?」

ぶっきらぼうに返すと、佑香は間髪入れずに詰めてきた。

『どこにいるの? 退院したなら退院したって言いなさいよ。家にも戻らないで……あなたの目には、私って母親がいないわけ?』

「退院してから何日も経って、今さら気づくんだ。……それって、別に心配してたわけじゃないだろ」

奏斗はため息をついた。

連絡を取りたい気持ちはあった。けれど家族の態度を思い出すたび、力が抜ける。

『黙って退院し...

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