第28章 全部もらう

車に乗り込むなり、夜見美羽はどこか機嫌を損ねたまま運転手に言いつけた。

「東久ビルへ」

東久ビルはこの街最大級の商業施設だ。美羽はおじいさんおばあさんの顔を見に行くたび、ここで手土産を自分の目で選んできた。勝手も分かっているし、さっと決められる。ついでに朝食も買える。

遠野千絢は行き先など気にしていないのか、何も言わなかった。

ほどなくして、車は東久ビルへ滑り込む。

美羽は千絢に向き直り、どこか得意げに紹介した。

「ここが東久ビル。大きいでしょ? 来たことある?」

千絢は自慢げな美羽を一瞥し、周りを軽く見回す。買い物を楽しみに来たわけではない。すぐに用件だけを口にした。

「花...

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