第80章 彼女がその見本

ほどなくして、夜見千絢の車は製薬会社の正面玄関へ滑り込んだ。

千絢は降りるなり、迷いなく中へ入っていく。

受付カウンターの女性が来客に気づき、きりっと表情を引き締めて声をかけた。

「お嬢様、どちら様にご用件でしょうか」

夜見千絢は受付を一瞥し、淡々と言う。

「夜見雲に会いに来た。どこ?」

その瞬間、受付の視線が露骨に冷たくなった。見たところ大学生くらい。しかも社長の名を呼び捨て。礼儀も何もない――そう決めつけたのだろう。

「当社は採用面接は行っておりません。お引き取りください」

嫌悪すら滲む口調。

千絢は眉をひそめた。自分が面接に来たように見えるのか。

「誰が面接だって言...

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