第109章

村内の手は小刻みに震えていた。

目の前に立つ、陰湿な光を宿した目つきの女を見て、それから分厚い札束へと視線を移す。

「私……そんなこと……」

「よく考えなさい。意織がこの子を産めば、一ノ瀬家にもうあなたの居場所はないわ。でも私に協力すれば、このお金で臨海市にマンションの頭金くらい払えるでしょう」

夏菜の言葉は毒を仕込んだ蜜のように、看護師の僅かな良心をじわじわと蝕んでいく。

手術室。

意織の意識は途切れ途切れになっていた。

冷たい金属の器具が身体を這う感覚があり、助産師が何度も「いきんで」と声をかけるのが聞こえる。

そこへ、マスク越しに目を泳がせながら村内が入ってきた。

彼...

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