第110章

暴漢たちの重い拳が、雨あられのように彼の背中や頭に降り注ぐ。

だが彼はただ保育器の車輪をロックし、両腕に頭をうずめ、そのか弱い小さな命を必死に庇い続けていた。

その時、廊下の奥から慌ただしい足音が押し寄せてきた。

強力なフラッシュライトの光の筋が暗闇を切り裂き、窓の外では赤と青のパトランプが激しく点滅している。

「警察だ! 武器を捨てろ!」

警備員と特殊部隊が廊下へ雪崩れ込む。

誘拐犯たちは形勢不利と見て非常階段からの逃走を図ったが、すでに逃げ道は完全に塞がれていた。

スタンガンの弾けるような鋭い音と、重い体が床に崩れ落ちる音が立て続けに響き渡る。

やがて、廊下の非常灯が頼り...

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