第111章

深は答えなかった。

左肩の切り傷と後頭部の鈍痛に視界が明滅したが、構っていられなかった。彼は無理やり身を起こした。

この目で夏菜を確かめなければならない。一体何が、彼女をあそこまで狂わせたのか、問いたださなければならなかった。

「どこへ行かれるのですか」

牧川展行が慌てて彼を支える。

「彼女に会う」

……

留置場に現れた夏菜は、まるで別人のようだった。

あのヒステリックな面影はない。指定の囚人服を身にまとい、髪は乱れ、虚ろな目をしている。まるで魂を抜き取られたかのようだった。

彼女を見つめる深の胸の奥から、最後に残っていた僅かな罪悪感すら、完全に消え失せた。

ただ思い込み...

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