第29章

「触らないでって言ったでしょ!」

意織は立ち上がったが、勢い余って体がふらついた。ソファの背もたれにすがりつき、掠れた声で吐き捨てる。

「深、吐き気がするわ。妊娠した愛人を連れて、私の目の前から消えて。おばあさまの場所をこれ以上汚さないで」

深は眉を深く寄せた。

「何の話だ? 誰が妊娠したって?」

「とぼけないで」意織は自嘲気味に笑う。「夏菜から直接聞いたわ。一ノ瀬社長、父親になるんですってね、おめでとう。跡継ぎができたんだから、さっさと離婚協議書にサインして、その子にまともな身分を与えてあげたらどう?」

深の瞳に、一瞬だけ戸惑いの色がよぎる。

彼は全く信じていなかった。意織が...

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