第32章

意織は立ち上がり、床に跪く深を見下ろした。

「責任なんて、伴侶を傷つけるための口実にはなりません。そんな基本的な善悪の区別すらつかないのなら、この結婚は最初から間違いだったんです」

深は顔を上げ、意織を見つめて低い声で言った。

「今後、二度と夏菜をお前の前に現れさせない。一ノ瀬家が彼女に負っている借りは金で清算し、俺たちの生活には一切干渉させない」

老夫人がすかさず口を挟む。

「意織や、このおばあちゃんの顔に免じて、あの子にもう一度だけチャンスをあげてくれないか? あの子の心にはちゃんとお前がいるんだよ。ただ、自分でも気づいていないだけでね」

老夫人はそう言いながら激しく咳き込み...

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