第37章
意織はふいに、自嘲するような笑い声を漏らした。
自分は一体、何に固執しているのだろう。
あの滑稽な片思いか、それとも名ばかりの結婚生活か。
彼女はきびすを返し、一ノ瀬ビルディングを大股で後にした。
顔に打ちつける雨粒には、どうしようもない苦い思いが混じっていた。
車には乗らず、魂が抜けたように雨の通りを歩き続ける。
そのとき、一台の車が彼女の傍らにゆっくりと停車した。
ドアが開き、血相を変えた悠が飛び出してくる。彼は手にしていたジャケットを、有無を言わさず意織の肩に掛けた。
「意織! どうして電話に出ないんだ」
顔を上げ、悠の焦燥に満ちた表情を見た瞬間、意織の瞳からせき止め...
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