第44章

よりによってこんな時に? 完全に彼を手放そうと決意したこの瞬間に? 深に塵芥のごとく辱められた、このタイミングで?

「奥様、お部屋までお連れします」坂本が焦燥に駆られた声で叫んだ。

「いいの」意織は歯を食いしばり、その隙間から声を絞り出した。「少し、一人にさせて」

彼女は坂本を押し除け、ふらつく足取りで階段へと向かった。

一歩踏み出すごとに、腹部の痛みが激しさを増していく。

ここにいてはいけない。

階段を半分ほど下りたところで、意織の視界は完全にぼやけていた。

階段の下に深が立っているのが見えた。冷ややかな視線を彼女に向け、その腕には満面の笑みを浮かべる夏菜を抱いている。

そ...

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