第50章

意織は自嘲気味に笑った。その顔には苦渋の色が滲んでいる。

「ビリッ――」

離婚協議書が真っ二つに引き裂かれる。その断面はひどく歪だった。

一度、そして二度。

新しい人生への切符になるはずだったそれは、細かな紙屑となって、高価な絨毯の上へひらひらと舞い落ちた。

「……分かったわ」と、彼女は静かに呟いた。

意織が妥協したというのに、深の胸に渦巻く鬱屈は晴れるどころか、かえって勢いを増していた。

彼は吸い殻を揉み消し、硬い声で命じる。

「奥様を部屋へ送れ。経の件は、進めておけ」

意織は踵を返し、ふらつく足取りで執務室を後にした。

彼女は気づいていなかった。廊下の角の暗がりに立つ...

ログインして続きを読む