第54章

鼓膜を破るほどの轟音を立てて、ドアが乱暴に閉められた。

意織はベッドのヘッドボードに力なく寄りかかり、シーツに滲む血の染みを見つめた。声もなく、ただ涙だけが頬を伝い落ちる。

そっと下腹部に手を当てた。そこはまだ平坦だったが、彼女にとって最後の希望であり、同時に絶望の淵でもあった。

「……ごめんね、赤ちゃん」

かすかな声で呟く。

ドアの外では、夏菜が深の陰鬱な横顔を盗み見ながら、内心でほくそ笑んでいた。

意織が病院へ行くことを拒み続ければ、深の疑念はますます膨れ上がるはずだ。

その不信感は種のように、一度蒔かれればふたりの間で大樹へと成長し、あらゆる修復の可能性を根こそぎ絶ち切っ...

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