第61章

そう言い捨てるなり、彼は意織の腕を掴みにかかった。彼女が身重であることなど、微塵も気にかけていない。

意織は必死に身をよじり、本能的に身体を丸めてお腹を庇った。

「離して! 白川振一郎、狂ってるわ!」

「来い!」

揉み合いの中、意織はその暴力的な力で乱暴に突き飛ばされた。

宙でバランスを崩した身体は、まるで糸の切れた凧のように、背後にあったマホガニーの書斎机へと激しく叩きつけられた。

そこは、鋭く尖った机の角だった。

鈍い音が響く。

意織の額が、そこにまともに打ち付けられたのだ。

その瞬間、世界が静止したかのように思えた。

激しい眩暈に襲われた直後、生温かい液体が眉骨を伝...

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