第65章

塀が高くなっている。

どんよりとした鉛色の空の下、首を振る赤外線カメラは、まるで疲れを知らない眼球のようだ。

悠にはよく分かっていた。深があそこを、隙間風ひとつ通さない鉄壁の要塞に変えてしまったことを。

「西園寺さん、中には入れませんよ」運転手が声を潜めて忠告する。

悠は何も答えなかった。

固く閉ざされた黒い門をじっと見据え、無意識に膝の上で指を叩く。

強行突破はできない。自ら死地に赴くようなものだし、何より意織を危険に晒すことになる。

利益がすべてを支配するこの世界では、最も堅固な砦ほど、内側から崩れるものだ。

三十分後。悠は本邸から三キロ離れた古い茶室で、一ノ瀬家の老執事...

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