第77章

「どけ」

悠は立ち止まり、かすれた声で言った。その響きには、有無を言わせぬ焦燥が滲んでいる。

護衛の一人はまぶた一つ動かさず、機械的な口調で返した。

「一ノ瀬社長から、何人たりとも中に入れるなと申し付かっております。――特に、西園寺さん、あなただけは」

「もう一度言う。どけ」

悠は一歩踏み出し、相手の肩を突き飛ばそうと手を伸ばした。

まだ癒えきっていない彼の身体の動きは、プロの護衛から見ればあまりにも遅く、力弱かった。

護衛は軽く身をかわし、そのまま手首を返して押し返す。

悠はよろめきながら数歩後退し、背中を廊下のタイル張りの壁に強く打ち付けた。

鈍い音がガランとした廊下に...

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