第82章

深夜、意織はまた嘔吐を繰り返していた。

吐瀉物には、赤い血の筋が混じっている。

胃の奥から喉元まで、焼け焦げるような痛みが這い上がってきた。

もがきながら呼び出しボタンに伸ばした手は、空中で力なく垂れ下がった。

虚しい。

本当に、何の意味もない。

ベッドサイドのテーブルに置かれた、監視アプリ入りのスマホを見つめる。

画面が再び点灯し、ニュースのプッシュ通知が表示された。

『夏菜が一ノ瀬グループ傘下の私立病院で妊婦健診か。一ノ瀬社長は姿を見せずとも、驚愕の貸切費用』

こんな記事を夏菜が流し、深が止めないということは、暗に認めているのと同じだ。

あるいは深にとっても、夏菜とい...

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