第88章

白川家に対する未練などない。建二のような人間の口から出る言葉に、真実などほとんど含まれていないことも分かっている。

だが、この状況で賭けに出る勇気はなかった。

熟睡している祖母をちらりと見やり、誰にも気づかれないよう上着を羽織って病院を後にした。

意織が白川の本邸に駆けつけると、門は少しだけ開いていた。

扉を押し開け、「お母さん」と声を上げた途端、背後で重々しい扉の閉まる音が響いた。

ガチャン、と鍵がかけられる音が、だだっ広いリビングにひどく甲高く響き渡る。

階段の登り口に立つ建二の顔には、微塵の悲壮感もなかった。あるのはただ、重荷を下ろしたような醜悪な笑みだけだ。

「意織、父...

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