第91章

その後、意織は病院へ向かった。

集中治療室の前は、吐き気を催すほど消毒液の匂いが充満していた。

分厚いガラス越しに、全身に管を繋がれた母親の姿を見つめる。

声もなく、ただ涙だけが頬を伝い落ちた。

白川家の破産を悲しんでいるのではない。あまりにも滑稽な自分の半生を思って泣いているのだ。

愛してはいけない人を愛し、嫁ぐべきではない家に嫁ぎ――その結果、両親までこんな目に遭わせてしまった。

「意織」

背後から、聞き慣れた声がした。

深が歩み寄ってくる。その手には厚手のトレンチコートが握られていた。

彼は何も言わず、ただ黙って意織の肩にコートを掛けた。

「これで満足?」

意織は...

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