第94章

医師は数枚の検査結果を差し出した。

「新谷さんに大事はありません。腹部への衝撃も軽く、子宮内の状態も安定しています。ただ、強いショックを受けたことによる生理的な不調でしょう。念のため一晩入院して、安静に過ごすことをお勧めします」

深はその報告書の束を受け取り、紙の縁を指先でなぞった。

医学的なデータで「異常なし」と判断されても、張り詰めた神経が緩むことはなかった。

脳裏に何度もフラッシュバックするのは、血だまりに倒れ込む夏菜の幻影と、彼女の父親が息を引き取る間際に見せた、あの濁った瞳だ。

「本当に、胎児に問題はないんだな?」

深の口調には、有無を言わさぬ切迫感が滲んでいた。

「...

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