第96章

芳子は泣き叫びながら、意織の体を力任せに突き飛ばした。

「行きなさいよ! 私がここで死ぬのを見たいの!? 意織、誰が産んで育ててやったと思ってるの! こんな恩知らずな真似、許さないわよ!」

廊下に立ち尽くし、ヒステリックに喚き散らす芳子を見つめながら、意織は胃の奥が激しく波打つような吐き気を覚えた。

三十分後、意織は一ノ瀬ホールディングスのエントランスホールに姿を現した。

受付の若い女性は新人らしく、名ばかりの社長夫人である彼女の顔を知らなかった。ただ事務的な愛想笑いを浮かべて告げる。

「申し訳ございません。アポイントのない方は一ノ瀬社長とお会いできません」

意織は何も言い返さず...

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