第10章 誰が先に風呂に入る

携帯の着信音が佐藤絵里の思考を中断させた。

彼女は画面に表示された発信者名を見て、口元に微笑みを浮かべてから電話に出た。

「お兄さん」

「愛しいサンシャインベイビー、家長の命令に従って、無理やり結婚させられたって聞いたぞ?」

「何もなかったよな?」

「あいつ、君を虐めたりしてないか?」

佐藤絵里は窓際の椅子に腰かけ、相変わらず矢継ぎ早に質問を浴びせる相手の言葉に耳を傾けた。

「何も起きていないわ」

「それならよかった、よかった。この件はまだ一郎には言ってないんだ。もし知ったら、きっとアメリカから殺到してくるぞ!君の兄さんは義理堅いだろ?へへ」

佐藤絵里は軽く「うん」と返事を...

ログインして続きを読む