第48章 自ら苦しみを求める

音楽ホールの外。

南山六也は肩を落とし、ただ立ち尽くしていた。

周囲の人影はすでになく、現場を片づけるスタッフさえほとんど残っていない。

彼の頬にはまだ薄く平手打ちの痕が残っており、遠目には失恋直後の男のように見えた。

——ようやく、自ら苦しみを招くとはどういうことなのかを思い知った気がした。

佐藤絵里を呼び戻すことはできず、おまけに佐藤愛まで怒らせて逃げられた。

結果、両方を一度に失ったというわけだ。

その背中を、白く小さな柔らかい手が叩いた。

六也は無視した。

だが相手は、さらに数回、軽く叩き続ける。

六也は苛立ち、歯を食いしばって振り返った。「くそ……あ……君か?」...

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