第56章 彼の隣に立つ

「愛、あなた正気なの? このままじゃ芸能界でやっていけなくなるわよ!」

「ネットでこんなこと認めちゃって、これからどの監督があなたを使ってくれるって言うのよ!」

不満げな声が、横から鋭く響いた。話しているのは、中の上といった容姿の小柄な少女だ。

彼女は、黒田真菜。遠慮のない手つきで佐藤愛のスマートフォンをひったくると、最新のコメント欄を確認し、たちまち眉を吊り上げて怒りを露わにした。

「あの佐藤絵里……! 普段は大人しそうな顔して、あんな計算高い女だったなんて!」

「藤原青樹と結婚しただけじゃ満足できず、今度は六也お兄様まで取り戻そうとするなんて!」

親友の憤慨ぶりに反して、佐藤...

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