第12章

陸原紀川視点

夜は墨を流し込んだみたいに濃い。廃れた埠頭の倉庫の脇、錆びたコンテナの山の陰に身を伏せながら、心臓が喉から飛び出しそうなほど暴れていた。

——今夜は、いい見世物になるはずだった。

陸原園子が呼んだ連中が白原花に「ちょっとした」恐怖を味わわせる。そこへ俺が天から舞い降りるみたいに現れて、怯えた白原花を抱きしめる。そうして自然に、彼女を『俺の檻』へ連れ戻す。

そんな筋書き。

……なのに、目の前の現実は、俺の幻想を粉々に踏み潰した。

白原花のベントレーが停まった、その瞬間だ。周囲の闇から黒服の大男が七、八人、ぬっと湧くように飛び出してきた。動きは無駄がなく、息も揃って...

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