第120章

私は何も言わず、指先に軟膏を取って、彼の傷口の縁へ少しずつ塗り広げていった。

たぶん――私の沈黙が、彼を不安にさせたのだろう。

彼は突然立ち上がり、私の手から軟膏をひったくると床へ投げ捨て、背を向けたまま私を乱暴に抱え込むようにして、落ち地の窓のガラスへ容赦なく押しつけた。

窓の外の雨音が、ふっと遠のく。

『花……』

彼が低く私の名を呼ぶ。ひとつひとつの音に、火花が混じっているみたいだった。

後頭部を掌で押さえられ、熱く、支配的な口づけが降り注ぐ。逃げ道なんて最初からない。

息が奪われ、視界が揺れた。

もつれ合うようにして、私たちは広いダブルベッドへ倒れ込む。

絡み合う呼吸...

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