第135章

俺は昔から、聡に嘘をつくのが苦手だ。

とくに――あの、何もかも見透かしてしまうみたいな眼で見られると、下手な言い訳なんて一瞬で剥がされる。

口を開きかけたのに、言葉が出てこない。

沈黙が続くほど、藤原聡の顔色が目に見えて悪くなっていった。

『白原花』

名を呼ぶ声が低い。不満と、抑えきれない焦りが滲んでいる。

『俺たち、隠し事はしないって言ったよな。……ドイツに何しに行く?』

不安を押し殺して強張った顎のラインを見た瞬間、胸がきゅっと痛んだ。

強がってるだけだ。怖いんだ。俺が遠くへ行くのが。

……結局、俺のほうが先に折れた。

『仕事じゃないの』

小さく息を吐いて、彼の眉間...

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