第140章

藤原聡はその場に凍りついたまま、私に襟元を掴まれるがままになっていた。

視線を落とし、私の目を見ようとしない。きゅっと噛みしめた顎の線が、堪えきれない痛みを滲ませている。

『離婚届の書類には、もうサインした』

喉仏が苦しげに上下し、声は風にさらわれそうなほどか細い。

『条件が足りないと思うなら、弁護士に作り直させる。俺名義の資産で……君が欲しいものは、全部持っていっていい』

逆らわず、ただひたすらに差し出して、心臓まで抉って詫びるみたいなその姿に、胸の奥の怒りと悔しさが一気に噴き上がった。

どうして勝手に決めるの。

どうして「君のため」なんて顔をして、私を遠くへ追いやるの。

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