第142章

足が、ぴたりと止まった。眉間が一瞬で寄る。

――あの男、陸原紀川。

視線に気づいたのか、陸原紀川が反射的に振り向いた。

私と藤原聡を認めた瞬間、彼の手にあった値引きシール付きの冷凍餃子が「ぱんっ」と床に落ちた。

陸原紀川は、私たちを凝視した。瞳の奥に浮かぶのは、動揺、屈辱、そして隠しきれない嫉妬。

私の視線の先を追った藤原聡の目が、すっと冷える。空気が目に見えるほど危険な温度に変わり、彼は何気ない一歩で私を背に庇った。

陸原紀川は、私たちの隙のない距離感を見て、顔色を青白く揺らした。両手は体側でぎゅっと拳になっている。

彼の視線が、私と聡の絡めた指に釘付けになる。唇が震え、私の...

ログインして続きを読む