第32章

リビングの空気が、陸原紀川の――天地を揺らすような土下座で、ずしりと凍りついた。

白原博雄の顔色は鉄みたいに青黒い。前の婿が、白原家の看板ごと地面に叩きつけたとでも思っているのだろう。

一方で白原秋穂は目を見開き、隠しきれない驚きと、底のほうに沈んだ密かな愉悦を滲ませていた。

その異様な静寂を、階段口から刺さるような女声が切り裂く。

「まあまあ、これは何の芝居? 紀川、いったい何をしてるの。うちの花が少し子どもでも、そこまで大げさに頭を下げる必要はないでしょう」

継母の林原雨子が、絹のガウン姿でゆるやかに降りてくる。心配そうに笑ってみせるくせに、言葉の端々がきっちり棘だ。

彼女は...

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