第36章

川崎武俊と約束した会食は、都心にある、個室の秘匿性と値段の高さで知られる懐石料理店に決まっていた。

私が上品な木戸をすっと押し開けると、川崎武俊はすでに愛想よく立ち上がって出迎えた。

その隣で陸原園子は、顔色を失いながらも、辛うじて体裁だけを保っている。

白いワンピースは、いかにも計算して選んだもの。化粧も隙がなく、清楚で無垢な『お嬢さま』を演出するつもりなのだろう。

けれど——怯えと怨嗟を隠しきれない目が、すべてを台無しにしていた。

「白原さん! お待ちしておりました!」

川崎武俊は熱のこもった笑みを貼りつけ、ほとんど媚びるように言う。

「さあ、こちらへ。今日は板前に、いちば...

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