第48章

藤原のご老爺さまは、ふっと言葉を切った。こちらへ視線を向けると、さっきまでの鋭さがすっと溶け、揺るぎない温かさに変わる。

「婚約に関することは、藤原家としての原則はひとつだけです」

一語一語、石を打つみたいに重く、はっきりと。

「すべて花の意思を最優先にする。花が頷くなら、日取りも段取りも結納も、藤原家が全面的に合わせる。花に、指一本分の悔しい思いもさせない」

声は大きくない。けれど、鐘の音みたいに、場にいる全員の胸をどん、と叩いた。

白原秋穂と林原雨子の顔は、「不愉快」なんて生易しい言葉では足りないほど歪んでいる。

一方で、損得勘定しかない父――白原博雄は、短い呆然のあと、抑え...

ログインして続きを読む