第68章

三年前――藤原聡の、婚約者。

その数文字は、凪いだ湖面に小石を投げ込んだみたいに波紋を広げた。けれど、私が想像していたような大波にはならない。胸の奥がざわつくより先に、目の前の現実がすとんと腑に落ちた。

私は彼女を見た。華やかで、自信に満ちた女。

その瞳にあるのは、隠しもしない探りと値踏み。

――なるほど。

彼女が現れた瞬間から、言葉の端々に説明のつかない敵意が混じっていた理由。会話のたびに、私と藤原聡の関係へ執拗に触れてきた理由。

「協力」という名目。

その実態は、試し。

そして最後の『あなた、本当に昔の私に似てる』という一言。

哀れむような予言にも、善意の忠告にも聞こえ...

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