第71章

白原花視点

電話を切ると、藤原聡はそのままハンドルを切り返し、落ち着いた運転で藤原本家の方角へ車を走らせた。

夜の闇と木立に包まれた藤原本家は、年月を重ねた屋敷だけが持つ重みと威厳を、静かに滲ませている。

けれど――長い並木道をゆっくり抜け、母屋の玄関先に揺れる二つの灯籠のあたたかな光が目に入った瞬間。

名門に足を踏み入れる緊張は、いつの間にか薄れていた。

代わりに胸の奥へ落ちてきたのは、帰ってきたみたいな安堵だった。

車が止まるやいなや、白髪の老夫婦が執事に支えられながら玄関から出てくる。

『まあまあ、うちの可愛い孫! それに……可愛いお嫁さん! やっと帰ってきたのねえ!』

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