第85章

「補償?」

三原奥様は鼻で笑い、瞳の奥の怒りをさらに燃え上がらせた。

「うちの三原家が、あなたのその程度の治療費や利益に困ってるとでも? 佳恵子の命を、お金で量れると思ってるの!」

言い返せなかった。私は黙るしかない。

娘を思う母親の前では、どんな説明も薄っぺらく聞こえてしまう。今の私には、それが痛いほど分かっていた。

重苦しい沈黙が張りついた、そのとき。

廊下の奥から、ばたばたと切迫した足音が近づいてきた。

反射的に顔を上げる。

藤原聡が、こちらへ一直線に歩いてくる。いや、ほとんど駆けていた。

昼間、墓地へ行ったときの黒いシャツのまま。上着を羽織る暇もなかったのだろう。ネ...

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