第92章

権力と金がくれる余裕――そして藤原聡が私に用意した『格』だ。受け取った以上、みっともなく落とすわけにはいかない。

オークションが中休みに入ったところで、私は席を立ち、化粧室へ向かった。

化粧室の扉の前まで来た瞬間、中から名媛たちのひそひそ声が漏れてきた。聞く気がなくても、耳に入る。

『聞いた? VIP1の個室、藤原奥様よ。白原花、完全に別人。800万のネックレス、瞬きもしないで落としたって』

『そうそう。藤原様が上限なしのブラックカード渡したらしいじゃない。甘やかし方が桁違いよ。陸原家、今ごろ腹の底から後悔してるでしょ。小銭拾って宝を捨てたようなもん』

『陸原紀川も見る目なさすぎ。...

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