第97章

小村玉子の、怯えきった小動物みたいな様子を見た瞬間、私の眉間はさらに深く寄った。

『玉子、そんなに慌ててどこへ行くの?』

呼び止めた声には、隠しようのない査問の色が滲む。

玉子の肩がびくりと跳ね、視線があちこちへ逃げた。私の目だけは、どうしても見られないらしい。

彼女は手の中のファイルをぎゅっと握り締め、指の関節が青白くなるほど力を込めたまま、しどろもどろに言う。

『白原様……わ、私……急ぎの用があって、先に処理してきます』

そう言い終えるや否や、私の返事すら待たずに、彼女は俯いたまま駆け出した。まるで背後に化け物でもいるみたいに、逃げるように。

そのよろける背中を見送ったまま...

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