第53章

一瞬にして、中島由美子の顔から得意げな表情が消え去り、代わりに隠しきれない恐怖が浮かんだ。

「あ......あなた、どうして戻ってきたの?」彼女は信じられないというように目を見開き、声も上ずっていた。「だって......もう......」

彼女の言葉は途切れた。うっかり口を滑らせそうになったことに気づいたのだ。

北野紗良は一歩一歩と近づき、薄い唇を固く結び、冷たい眼差しを向けていた。

元は整っていた髪型は乱れ、上品なドレスも少し乱れていて、手首には赤い痕が残っていた。

「続けてみたら?」北野紗良は冷笑した。「もうホテルに運転手に送られて、松本遠というけだものに弄ばれているはずだって...

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