第311章 脳内補完帝は元夫

御影星奈は彼の存在に気づいていた。

しかし、自ら声をかけることはなく、さっと一瞥しただけで、すぐに視線を前に戻し、まっすぐ前だけを見つめている。

瀬央千弥もまた、彼女に話しかけるつもりはないようだった。

彼は御影星奈が一つの取調室に入るのを見届けてから、一人で刑野栞に尋ねた。

「刑野さん」

男の低い声が響く。

刑野栞は彼を知っていた。彼女は礼儀正しく頷く。

「瀬央さん」

「御影星奈はもう事情聴取を終えたはずでは? どうして……」

その先の言葉を瀬央千弥は口にしなかったが、刑野栞はすぐに察した。

彼女は簡潔に説明する。

「御影お嬢さんは、黒川桐乃に何か用事があるようです」...

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