第361章 花を撒き、付き合った

 謝部綾人は全身を硬直させ、突然近づいてきた女を愕然と見つめた。

 唇に伝わる柔らかな感触が、彼の顔を赤く染め、心臓を跳ね上がらせる。

 まるで時が止まったかのようだ。

 鼻腔をくすぐるのは、女の身体から漂う甘い香り。彼を惑わし、溺れさせる。

「ドクン、ドクン!」

 心臓が激しく鼓動を打つ。

 謝部綾人の漆黒の瞳は、深く暗い色を湛えていた。欲望を必死に抑え込んでいるが、それは今にも決壊しそうな堤防の上を彷徨っている。きっかけ一つで、すべてが迸り出てしまうだろう。

 まるで檻に閉じ込められた獣が、久しく口にしていなかった『肉』を与えられたかのように。

 御影星奈はすぐに唇を離さ...

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