第500章 籠絡を試みる

「先輩」

 羽鳥理と富田心恒の声が重なった。

 御影星奈は富田心恒の腕を掴むと、少し力を込めて自分の背後へと引き寄せた。

 男は苦悶の声を漏らす。痛みが走ったのだ。

「私の後ろで大人しくしていなさい。勝手な真似はしないで」

 身長百八十センチを超える富田心恒は、御影星奈よりも頭半分ほど背が高い。

 背後に立つ今、わずかに視線を落とすだけで、彼女の表情をつぶさに見て取ることができた。

 彼は高鳴る鼓動を抑え込み、顔色一つ変えずに低く応じる。

「……はい」

 羽鳥理が富田心恒を支え、二人で御影星奈の背後に立つ。

 今は虚勢を張っている場合ではない。実力こそがすべてなのだ。

...

ログインして続きを読む