第529章 綺麗に舐めろ

程なくして、ボディガードの一団が凶器を手に看板を叩き割ろうと殺到した。

中でも常軌を逸していたのは、木のバスケットを提げた男だ。ぱっと見、中身は卵のようである。

羽鳥理の顔色が、瞬時に陰った。

彼はすでに、菩提道観の扁額が卵液で汚される光景を脳裏にありありと思い描き、絶望していたのだ。

傍らでは、羽田佳奈が腕組みをして立っている。体の傷はあらかた治っているようだが、よく見ればまだ痕跡が残っていた。

殴られたわけではない。

あの夜、恐怖のあまり錯乱し、無我夢中で逃げ回った際に自分でぶつけた傷だ。

だが羽田佳奈は、謝部綾人が本気で自分に手を上げるつもりだったことを微塵も疑っていなか...

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